📈 昇給シミュレーション
昇給分の「いくら残るか」を決める限界手取り率
昇給で年収が上がっても、その全額が手取りとして増えるわけではありません。昇給分には社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など、合わせて約14〜16%)がまず引かれ、さらに給与所得控除と社会保険料控除を差し引いた残りにだけ、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税10%がかかります。昇給額のうち最終的に手元へ残る割合が「限界手取り率」で、計算式は限界手取り率=1 − 社会保険料率 −(1 − 給与所得控除率 − 社会保険料率)×(所得税の税率×1.021 + 住民税率10%)です。給与所得控除率は、年収360万〜660万円の部分で20%、660万〜850万円の部分で10%、850万円超は0%(控除額が195万円で頭打ち)。年収帯によって所得税の税率と控除率が変わるため、同じ昇給額でも手元に残る金額は大きく変わります。
たとえば年収400万円→450万円(所得税率5%)の場合、社会保険料が約14%、課税対象になるのは昇給分の約66%(1 − 20% − 約14%)なので、(5%×1.021+10%)×約66%=約10%が税として引かれ、限界手取り率は約76%になります。「所得税率+住民税10%+社会保険料約15%」を単純に足して引くと、実際より手取りを少なく見積もってしまいます。
年収帯別の限界手取り率(本ツールの計算結果)
下表は、35歳・扶養なし・配偶者なしの会社員(協会けんぽの全国平均料率)で、本ツールと同じ計算を昇給前後に当てはめた結果です。社会保険料は標準報酬月額の等級で段階的に変わるため、昇給額が小さいと率がぶれます。ここでは50万〜100万円の昇給を例にしています。
| 年収 | 手取り増 | 限界手取り率 | 所得税等 | 住民税 | 社会保険料 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万→350万円 | +387,088円 | 77.4% | +14,257円 | +27,927円 | +70,728円 |
| 400万→450万円 | +379,537円 | 75.9% | +16,808円 | +32,927円 | +70,728円 |
| 500万→550万円 | +343,376円 | 68.7% | +22,254円 | +29,514円 | +104,856円 |
| 600万→650万円 | +376,343円 | 75.3% | +35,360円 | +34,633円 | +53,664円 |
| 700万→780万円 | +506,983円 | 63.4% | +125,308円 | +61,365円 | +106,344円 |
| 800万→850万円 | +348,684円 | 69.7% | +87,654円 | +42,926円 | +20,736円 |
| 1000万→1100万円 | +645,563円 | 64.6% | +195,242円 | +93,423円 | +65,772円 |
| 1200万→1300万円 | +617,372円 | 61.7% | +217,957円 | +92,815円 | +71,856円 |
| 1500万→1600万円 | +539,719円 | 54.0% | +322,957円 | +95,852円 | +41,472円 |
| 1800万→1900万円 | +560,253円 | 56.0% | +335,243円 | +99,500円 | +5,004円 |
所得税の税率表は国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」、社会保険料は全国健康保険協会の令和8年度保険料額表と料率が出典です。
「税率の境目」と社会保険の頭打ちで手残りが変わる
所得税は累進構造のため、課税所得が税率の境目(195万円・330万円・695万円・900万円・1,800万円・4,000万円)を跨ぐ昇給では、限界手取り率が一段下がります。一方で社会保険料には頭打ちがあります。厚生年金は標準報酬月額65万円(年収約780万円)で固定されるため年収780万円を超えると増えず、健康保険も標準報酬月額139万円(年収約1,670万円)で頭打ちになります。表のとおり、社会保険料の増分は年収800万円台で小さくなり、1,800万円台では年5,000円ほどです。そのぶん、年収780万円を超えると、税率が上がっても限界手取り率が持ち直す区間があります。具体的な昇給ケースを見ると次のとおりです。
- 年収400万円→450万円(昇給50万円):限界手取り率約76%で手取り約38万円増
- 年収700万円→780万円(昇給80万円):限界手取り率約63%で手取り約51万円増
- 年収1200万円→1300万円(昇給100万円):限界手取り率約62%で手取り約62万円増
年収が1,500万円を超える帯では昇給額の5割台しか手元に残りません。福利厚生・退職金・株式報酬といった現物給付の方が税制上有利になるケースもあります。
見落としがちな「翌年効果」と反映タイミング
住民税は前年所得ベースのため、昇給した翌年に住民税が上がる「翌年効果」に注意が必要です。昇給した年は手取りが増えても、翌年に住民税負担が増えて実感が薄れることがあります。また社会保険料の標準報酬月額は4〜6月の給与平均で1年間固定(定時決定)されるため、昇給時期によって保険料への反映タイミングが変わります。本ツールは現在の税制・社保料率を前提とした概算で、賞与込みのフルパッケージは反映していません。賞与増額の場合は別途賞与版の計算を推奨します。
よくある質問
昇給分には、まず社会保険料(約14〜16%)が引かれ、給与所得控除と社会保険料控除を引いた残りに所得税・住民税がかかるため、額面の増加分がそのまま手取りに反映されません。本ツールの計算(35歳・扶養なしの会社員)では、年収300万〜2,000万円帯の昇給50万〜100万円で手元に残るのは昇給額の約54〜77%で、年収が高いほど低くなります。所得税の税率の境目を越えると率は一段下がります。
昇給額のうち、税金・社会保険料を引いた後で実際に手元に残る割合です。例えば年収500万→600万円の場合、増加100万円のうち手取りで増えるのは約72万円で、限界手取り率は約72%(35歳・扶養なしの会社員)。年収が高い帯ほどこの率は下がる傾向があります。
標準報酬月額は通常4〜6月の給与平均で決まり(定時決定)、9月から1年間適用されます。昇給で2等級以上変動すると随時改定が行われ、月給変動の4か月目から新しい保険料が適用されます。賞与は支給ごとに保険料計算されます。
本当です。住民税は前年の所得に基づき翌年6月から翌々年5月まで課税されます。そのため昇給した年の住民税は前年の所得ベースで安く、翌年6月から新しい所得ベースで増加します。退職・転職時のキャッシュフロー設計で要注意です。
年収500万円の方は所得税の税率10%(復興特別所得税込みで約10.2%)・住民税10%・社会保険料約14〜16%ですが、給与所得控除と社会保険料控除を引いた残りにだけ税がかかるため、実際に引かれるのは昇給分の約28〜31%(手取り約69〜72%)です。年収800万円の方は、500万円帯より所得税の税率が20%に上がる一方で社会保険料の増分が小さく、年収800万→850万円で手取りは約70%残ります。年収1,000万円を超えると残る割合は6割台、1,500万円を超えると5割台です。
年収帯によります。iDeCoに月2万円(年24万円)を拠出すると、全額が所得控除になり、所得税(復興特別所得税込み)と住民税が減ります。課税所得が所得税10%の段に収まる年収500万円帯なら年約4.9万円、20%の段に入る年収800万円帯なら年約7.3万円です。昇給と節税は両方併用するのが効率的です。
短期的には逆転ゾーンで手取りが一時的に減ることがありますが、扶養を外れた後も年収約151〜163万円(勤務先の社会保険か国民健康保険かで異なる)を超えれば、扶養内より手取りが多くなります。社会保険加入で将来の厚生年金・傷病手当金が増え、生涯収入では大きくプラスになります。
※ 本計算は概算です。実際の金額とは異なる場合があります。
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この計算の根拠・出典
昇給額に対して手取りがどれだけ増えるかを算出します。所得税の累進税率と社会保険料の等級変動を反映しますが、標準報酬月額は4〜6月の給与で決まるため、実際に保険料へ反映される時期は昇給月とずれます。