🧱 年収の壁ガイド
年収の壁とは(手取りが急減するライン)
「年収の壁」とは、パート・アルバイトの年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増え、手取りが急減するラインのことです。かつては100万・103万・106万・130万・150万・201万円の6つが定番でしたが、令和7年度・令和8年度の税制改正で税の壁が大きく動き、現在は110万・136万・178万の3つに置き換わっています。一方で社会保険の壁(106万・130万)は改正されておらず据え置きのままです。その結果、以前は「103万円の壁」が最初の関門でしたが、今は税より先に社会保険の壁が来る構造に逆転しました。手取りへの影響も社会保険の壁のほうが圧倒的に大きく、超えると年20〜30万円の負担増になります。
110万・136万・178万の壁(税の壁)
①110万円の壁:住民税がかかり始めるライン。単身者の非課税限度額(合計所得45万円)に令和8年度の給与所得控除65万円を足した金額です。超えても税額は年数千円〜1万円程度で、影響は限定的。②136万円の壁:配偶者控除(38万円)の対象から外れるライン。扶養親族・同一生計配偶者の所得要件が58万円から62万円に引き上げられ、給与収入では136万円に相当します。ただし超えても配偶者特別控除が引き継ぐため、世帯の税負担はすぐには変わりません。③178万円の壁:本人に所得税がかかり始めるライン。給与所得控除74万円+基礎控除104万円の合計です。従来の103万円から75万円も上がったため、税だけを理由に働く時間を抑える必要はほぼなくなりました。なお178万円という水準は令和8・9年分の時限措置によるもので、令和10年分以降は縮小される予定です。
106万・130万の壁(社会保険の壁)
①106万円の壁:従業員51人以上の企業で、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月超勤務見込み・学生でない、の要件を全て満たすパートが社会保険加入義務化(2024年10月から拡大)。本人負担で年15〜20万円の保険料増。②130万円の壁:全ての人に適用される配偶者の社会保険扶養基準。超えると自分で国民健康保険+国民年金に加入し、年25〜30万円の負担増。配偶者の会社の家族手当(数千〜2万円/月)も打ち切られる場合あり。最も注意が必要な壁です。
169万・207万の壁(配偶者特別控除の縮小)
①169万円の壁:配偶者特別控除(最大38万円)が段階的に縮小し始めるライン。配偶者の合計所得95万円に給与所得控除74万円を足した金額です。169万円超〜174万円以下で36万円、174万円超〜179万円以下で31万円、と5万円刻みで逓減していきます。②207万円の壁:配偶者特別控除が完全に消滅するライン(合計所得133万円+74万円)。従来はそれぞれ150万円・201.6万円でしたが、給与所得控除の引き上げに連動して上がりました。なお控除を受ける側(配偶者)の合計所得が900万円(給与収入約1,095万円)を超えると控除額は3分の2、950万円超で3分の1に縮小し、1,000万円超で消滅します。また会社の家族手当・扶養手当は税制とは別基準で、150万円・180万円・200万円などを支給要件にしていることが多く、税の壁を超えていなくても手当が切られる場合があります。就業規則の確認が欠かせません。
壁を超えるべきか?(損益分岐点の考え方)
短期的には手取りが減りますが、長期的には①将来の年金額が増える(厚生年金加入の場合)、②傷病手当金・出産手当金が受給可能、③育休給付の対象になる、というメリットも。【損益分岐点】「壁を超えるなら160万円以上」と言われる根拠は、社保加入で年20〜30万円減るため、それを取り戻すには額面で年30〜40万円の上乗せが必要だから。賢い選択は「103万円・130万円以内に抑える」か「160万円以上(できれば200万円超)を目指す」の2択。中途半端な年収帯(120万・140万)は手取りで損する逆転ゾーンになる可能性があります。
大学生の子がいる家庭は190万円まで働ける
19歳以上23歳未満の子を扶養している場合、従来は子のアルバイト年収が103万円を超えると親の特定扶養控除(63万円)が一気に消え、親の税負担が年10万円以上増える「大学生の壁」がありました。この問題に対応するため「特定親族特別控除」が新設され、子の合計所得が62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)の範囲では、控除額が段階的に逓減する仕組みに変わりました。つまり収入が増えても控除が急に消えることはなく、崖ではなく坂道になったということです。住民税側にも同様の控除(最大45万円)が設けられています。適用を受けるには年末調整時に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要で、出し忘れると控除されないため注意してください。また子自身も勤労学生控除の所得要件が85万円から89万円(給与収入163万円)に緩和されています。
130万円の判定は「月額108,334円」で見る
社会保険の扶養から外れる130万円は、1月から12月までの実績で判定するものではありません。健康保険では「今後1年間の収入見込み」で判断するため、月額108,334円(130万円÷12)を継続的に超えた時点で扶養から外れるのが原則です。年末に慌てて働く時間を減らしても、それまで月12万円稼いでいれば遡って外れる可能性があります。逆に、一時的な残業で数か月だけ超えた場合は、事業主の証明があれば連続2年までは扶養にとどまれる特例があります。また判定に使う「収入」には、税法上は非課税である通勤手当や、雇用保険の失業給付・傷病手当金も含まれる点が税の壁と決定的に異なります。判断基準は最終的に加入している健康保険組合が決めるため、迷ったら勤務先経由で確認するのが確実です。
壁を超えるべきか?(損益分岐点の考え方)
税の壁が178万円まで上がった今、実質的に意識すべきは社会保険の106万円・130万円だけです。短期的には手取りが減りますが、厚生年金に加入すれば①将来の年金額が増える、②傷病手当金・出産手当金が受給できる、③育休給付の対象になる、というリターンがあります。【損益分岐点】社会保険加入で年20〜30万円の負担増になるため、これを取り戻すには額面で年30〜40万円の上乗せが必要です。したがって賢い選択は「106万円または130万円の手前に抑える」か「160万円以上、できれば180万円超を目指す」の2択。年収115万円や140万円といった中途半端な帯は、働く時間が増えたのに手取りが減る逆転ゾーンになります。世帯単位で見ると配偶者手当の有無も効いてくるため、Taximoの年収の壁シミュレーション(/calc/income-wall)で実際の数字を確認してから決めてください。
改正の経緯と今後の見通し
①「年収の壁・支援強化パッケージ」(厚労省2023年〜):企業がパート従業員の社会保険加入に伴う手取り減を補填した場合の助成金、130万円を一時的に超えた場合の特例などが設けられました。②令和7年度税制改正:基礎控除が48万円→58万円(低中所得層には加算)、給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円となり、103万円の壁が160万円に移動しました。③令和8年度税制改正:基礎控除の本体が62万円、加算後の最大が104万円に、給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられ、壁は178万円へ。物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みも導入されました。④注意点として、104万円の加算は令和8年・9年分の措置で、令和10年分以降は99万円・95万円と段階的に縮小される予定です。壁の位置は今後も動くため、毎年見直すことをおすすめします。
関連する計算ツール
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税の壁は令和8年分の所得税・令和8年度の住民税に基づく給与収入ベースの目安です。社会保険の106万円・130万円は改正されておらず据え置きです。給与収入への換算は給与所得控除のみを考慮した概算で、他の所得や控除がある場合は前後します。
※ 本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。